3. 基本的なCADの概念
この章はCADシステムの基本的な考え方を概説します。 すでにCADシステムを使って作業されている方であればこの章を読み飛ばしたいと思うかもしれません。 この章で述べられる概念は全て詳しく後述されています。
3.1. 図形要素(エンティティ)
エンティティはCADシステムで扱う図形要素のことです。 ほとんどのCADシステムによってサポートされる典型的な図形は: 点、線分、円、楕円弧。より複雑でCAD特有のエンティティには ポリライン、テキスト、寸法、ハッチングおよびスプラインが含まれます。
3.3. 画層
コンピュータに支援された製図の基本概念は、図面を構成する画層の使用にあります。図面の要素は必ずある一つの画層にあり、 各画層は図形をいくつもを含むことができます。普通、共通の機能または共通の属性を持った図形は同じ画層に置かれます。 例として '軸' という名前の画層に図面上の全ての軸配置したいとします(図 1を参照)。 画層は属性(色、線幅、線種)を持ちます。どの図形も独自の属性か属する画層の属性を持つことができます。 この場合、'軸'画層の色を変更することで全ての軸図形の色を変えることができます。
手書きの製図でも同じようなアプローチが採られました。 配線、空気調節といった建物本体とは異る設備は、 頻繁に別の透明な図面用紙に引かれました。 これらの用紙は最終図面を作成するために重ね合わされました。
図1: 画層の使用例。
3.4.部品
部品とは複数図形のまとまりです。 部品は図面に異なった属性、倍率、回転角度、位置に何度でも挿入することができます(図 2を参照)。 通例、配置された部品は 挿入図形 と呼ばれます。 挿入図形は図形要素や画層と同様に属性を持ちます。 挿入図形を構成する図形は挿入図形の属性を共有するか、独自の属性を持つことができます。 作成された後も挿入図形は生成時に使われた部品に関連付けられています。挿入図形の強みは関連付けられた部品 を修正することで全ての挿入図形もそれに応じて変更することができるということです。
図2: 一つの部品から作成された色、角度、倍率の異なる三つの挿入図形。
3.5.CAD を使った製図
多くの面で、CADは従来の製図に類似しています。図用紙上にプランや物の外観を描く場合、 線を引くために定規のような製図用具を使用するでしょう。 CADシステムも同じ目的を達成するために様々な道具を提供します。 CADシステムの大きい利点はそれを作成した後、作図されたものを容易に変えることができるということです。 このことは図面用紙からCADに移る上で学ぶべき困難な事の一つかもしれません。 CADシステムを使って作業する際、最終図面には残さない仮の作図線を描いたり、正確でない長さの線や後で削除するような線を描くでしょう。 (図 3を参照)。 CAD初心者のよくある間違いは最終的な図面をすぐに作成したいと考えることです。
図3: 図形編集するCADシステムの機能と作図補助線を使用して素早く図面を作成する三つのステップ
3.6. 座標系
どのようなCADプログラムでもそれをうまく使うには座標系がどのように働いているかをよく理解することが必要です。 座標系をよく知らないのであれば、この基本的な概念に時間をかけること強くお薦めします。
原点
図面の原点とは X と Y 座標の交点です。それが図面の絶対原点です。
相対原点
絶対原点に加え、QCad には相対原点があります。 相対原点は局所的な構造図形の一時的な参照点として任意に設定、移動できます。
デカルトの座標
(名前の由来はフランスの哲学者 ルネ;デカルト(Rene Descartes) 1596-1650 )
デカルトの座標系は他の座標系が指定されなければ通常使用される標準的な座標系です。 デカルトの座標系では、点の位置はXとYの二つの座標軸からの距離で表されます。 QCadでデカルト座標系の記述の仕方は:
x-座標,y-座標
x-座標 の部分は 2.5
といった数値か cos(30)/2
の様な数学的表現が可能です。(数学的表現を参照).
例えば座標 3.5 , 7 は原点から右へ3.5単位、原点の上へ7単位の位置のことです。
図4: 絶対デカルト座標40,30。
デカルト座標系は原点からではない座標表現もできます。 QCadの相対座標系について述べます。 相対デカルト座標系の記述の仕方は:
@x-座標、y-座標
図5: 相対デカルト座標@30,10。
極座標
極座標系は点の位置を表すために距離と角度を使います。QCad では以下のように記述します:
距離<角度
図6: 絶対極座標50<37。
デカルト座標系のように極座標系でも原点からではない座標表現ができます。 QCadで相対極座標系の記述は:
@距離<角度
図7: 相対極座標@31.6<18.4
3.7. オブジェクトとグリッドのスナップ
QCadで座標を指定するときは、既存図形の端点や中点といった特定の点やグリッド位置を正確に選ぶスナップ機能が使えます。
"オブ ジェクトスナップ"の章で 全てのスナップツールについて説明しています。
3.8. 基本的な編集
エンティティの構造
エンティティは様々な作図ツールを使って描くか、既存のエンティティを複写することにより図面に加えられます。エンティティを描くことはエンティ ティを定義するのに必要なパラメータと線分の端点のようなすべての点を定義することを意味します。
エンティティの選択
エンティティを削除、複製、変形するにはまず選択しなければなりません。 エンティティの選択はCAD操作の重要な基本の一つです。 QCad は図形グループやある範囲に含まれる図形群、連結図形などを素早く選択するツールを用意しています。
"エン ティティの選択"の章で QCad の選択ツールについて説明しています。
削除
図形の削除とは図面から図形を削除することです。
変更
CADシステムの基本的は図形編集には変形、回転、鏡面、スケールが含まれています。 これらは選択図形の形状を変えませんが、変更するコマンドもいくつかあります。 既存図形を伸長、引き伸ばし、部分削除することができます。
" 変更"の章で 図形を削除、編集する全てのツールの説明を一覧できます。
3.9. CAD画面表示
手書きの製図と異なりCADでは前もって図面用紙サイズや図面縮尺を決めておく必要がありません。 図面縮尺が ありません: 全てのサイズ、距離は実座標値です。10 メートル の物 は 10 メートル として作図されます。 印刷の時だけ用紙サイズと図面サイズを考慮して図面縮尺を決めル必要があります。
画面上で図面を詳細に見るために拡大したり、広い範囲を概観するために縮小することで表示範囲を調整することができます。 ほかにCADの画面表示操作で重要なものは図面移動です。図面のほかの部分を見るために表示縮尺を変えずに表示範囲を移動させます。
"表示"の 章で ズーム、表示機能について述べられています。